劇団綺畸2021年度夏公演
作・演出 西山珠生
[公演動画]
大きな街のどこか、とある小さな雑貨店、Myosotis。
そこには古い本があり、壊れかけた楽器があり、遠くの国の玩具が、
ほこりをかぶった装飾品があり、美しい人形がある。
店主は品物を並べ、店を開ける。お気に入りの場所に身体を沈めて人を眺める。
女が店を訪れる。たわいない言葉を交わし、こいびとの待つ家へと帰っていく。
花屋は携帯電話を手にせわしなく行き来し、あるいはけだるげに座り込む。
少女がほほえむ。のばされた手がその頬をなぞる。
愛しい。心から愛しい。どうしても。
怖い。私はひとり老いていく。
わたしを忘れないで一―。
STORY
CHARACTOR
茉莉奈
かわいらしく、優雅。そして儚げ。時に驚くほどの色香、人を惑わす香りをみせる。自分の魅力を知っている。彼女は、彼女に語りかけるひとの分、表情を持っている。そしてまた、彼女自身のものも?
杏
慎ましく平和に、必要以上に他人と関わらず、ひとり暮らしていた。彼女にも家族はあったのだろうが、もはや忘れてしまった。一見独立しているようだが、ふとしたところでおもちゃを握りしめる子ともがのぞく。そんなとき彼女が見せる淋しい陰は、とこか目を惹きつける。そこに垣間見えるくらい情熱。
桂
挫折の記憶は彼の奥深くに刺さっているのだろうが、見ないふりをしているのか。このまま頭を空っぽにして生きていきたいと思う。仕事があって、時間があって、ちょっと気になる女の子がいればそれでいい。でもやはり何かが足りない。欠けているなにかは彼に愁いを帯びた顔をさせる。
橘
静かにゆったりと、様々なものごとを語る。また時には誰かの話をただ聞いてい
る。そうしていないと不安だからかもしれない。過去を捨てようとしつつも過去に縋り付いている。世界の遥かかなたをみているような眼をするとき、彼はなにを見、聞いているのだろう。